白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
タイタスに向けて“やりなおしの魔法”が発動したとき、月と光の精霊たちが一時的に西の塔に押し寄せ、周辺にいた風の精霊たちが追い出された。
追い出された風の精霊たちは、異変をジェイニーに伝え、彼女は事態を把握したのである。
ふだんは求められない限り人間たちと干渉しない精霊だが、邪悪な気配には敏感だ。怪盗アプリコット・ムーンが国民に騒がれていたときはぜんぜん反応しなかった彼らも、タイタスが潜入した際は危機を察知したのだ。それゆえ、ジェイニーは精霊たちを無下にしない。
精霊たちに慕われていたローザベルも、きっとそうだったのだろう。
――ローザ、みんな心配しているんだから。早く起きなよ?