白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 いまの彼は星詠みのノーザンクロスではない、別の古民族の一族に助けられている。それだから“稀なる石”が魔法をつかう際に重要な役割を持っていることも知っているのだろう。アイーダは嘆いた。いまのスワンレイク王は古代魔術を融合するだけでなく、自分だけのモノにするのではないか……マーマデュークのときは、もっと心が寄り添えていたのに、と。

 アイカラスの妃に求められてもおかしくなかった状況でローザベルと同年代の身分の低い亡き王弟の息子に嫁ぐことになったのも、王家の言動を警戒してのことだったのだろう。

 たしかに彼には黒い噂があった。初代国王マーマデュークの死にまつわる、黒い噂が。
 もしそれが真実なのだとしたら、ノーザンクロスの一族はスワンレイクの一族を断罪し、“やりなおしの魔法”をかけなくてはならない。両親からの忠告を鵜呑みにしていたローザベルは、さもなければ、ローザベルと結婚したウィルバーのもとへ災禍が訪れるのだと信じていた。
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