白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 その状態で結婚初夜に不確定な未来を視てしまったローザベルは、“稀なる石”を集めることで未来を翻せる可能性があることを知り、怪盗アプリコット・ムーンになる賭けに出る。

 自分と結婚すればウィルバーは灰色の白鳥から純白の白鳥へと成長するものだとばかり思っていた。けれど現実はしがない憲兵団長のまま、アイカラスに飼い殺されている状態だ。
 どうすれば彼を羽ばたかせることができるのだろう。

「必要な“稀なる石”を回収でき次第、彼にアプリコット・ムーンを捕まえてもらえばいい? だけど、そんなこと――」

 怪盗アプリコット・ムーンとして“稀なる石”を集め、不確定な未来を確変するための大魔法をつかう理由を、彼女を捕らえるよう王命を受けたウィルバーに訊いてもらうには、ローザベルの正体を明かす必要がある。彼は、自分の愛する妻が憲兵団の宿敵である女怪盗だと知っても、主たる王ではなくローザベルを選んでくれるだろうか。
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