白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 もう、媚薬なんかなくてもお互いに気持ちよくなれることを知っている。そのままひとつになって愛を交わせば言葉がなくても通じ合える。
 あれから“星詠み”による“不確定な未来”は、現れていない。ゴドウィンにはローザベルが魔法耐性の強いウィルバーに二度娶られたことで、ノーザンクロスの魔法のちからが薄れたからじゃないかと仮説を立てられたが、真相は謎のままだ。ひとまず悪夢に魘されることがなくなったので、ローザベルは安心して彼の腕のなかで眠れるようになった。
 未来を視ることがなくなったローザベルを、国王アイカラスも皇太子フェリックスも責めることはない。古民族の魔法のちからは消えゆく運命にあるのだから、気に病むことはないと花嫁に言ってくれた。
 だから今、ローザベルとウィルバーは同じ景色を見て、同じ未来に胸を踊らせている。
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