白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
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ウィルバーによって絶頂を来したローザベルは一瞬だけ意識を真っ白にしたものの、すぐに彼の腕のなかへと戻ってきた。繰り返し絶頂を味わっていたらまた悪夢のような“不確定な未来”を視てしまっただろうが、彼の方も疲れていたのだろう、今夜はこれで勘弁してくれるらしい。
「――ローザの言うとおりだよ。今夜もあの女狐にあっさり盗まれてしまったんだ」
寝台の上で一緒に横になったウィルバーは、すっきりしたからか、今日の仕事内容を反芻している。
怪盗アプリコット・ムーンが盗んだ今回の“稀なる石”は、博物館内の他の展示物に比べて価値の低いものだったそうだ。
そのためお偉方から咎められることもなく、「次頑張れよ」と労われただけだったとのこと。
なんだか釈然としないんだよなと悶々としながらローザベルを抱いたウィルバーは苦笑する。
そんな夫を見て、ローザベルも曖昧な笑みを浮かべる。たしかに盗品自体にさほど価値はなかった。怪盗アプリコット・ムーンはただ、プレートに付属していた“稀なる石”が持っている魔力を量りたかっただけ。