白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ローザベルとウィルバーと結婚初夜
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ローザベルがいまの状況で“稀なる石”をつかわずに扱える古代魔術は二種類ある……目眩ましに似た幻覚を見せる術と、通称星詠みとして知られる夢占の術だ。
だが、スワンレイク王家が欲していたのはその星詠みの延長線上にある予言……未来視のちからだった。
「この娘がのぞけるのは不確定な未来だけです」
ウィルバーとの婚約から七年、いよいよ翌年に結婚式を挙げる、というところでローザベルの両親は念を押すようにスワンレイク王へ告げたが、アイカラスはそれでも構わないと鷹揚に頷いた。
もし、完璧な予知夢や未来視のちからを持っていたら、ローザベルはウィルバーではない、王本人やちゃんとした皇太子に嫁がされていた可能性もあったのかもしれない……婚約の経緯をくわしく知らないローザベルはこのときようやく両親から国王が自分をウィルバーの花嫁に迎えると言われて安堵したのだ。十歳のときに一度だけ顔をあわせた、空色の瞳の少年と一緒になれることに。