白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ローザベルは結婚寸前まで古代魔術の勉強を怠らなかった。知識を身につけ培ったことで初代国王だけが仕えさせた宮廷魔術師と呼ばれた曾祖母に近づくことはできたが、魔法を実践するとなるとやはり完璧な未来を予知することは叶わなかった。
それでも王家にゆかりある人間に彼女を嫁がせたことで、アイカラスは体裁をととのえ、古代魔術の継承者を手の届く範囲に置いたのだ。ローザベルが“稀なる石”をつかえばさらに上位の魔法を扱えると悟って。
失われつつある古代魔術のちからを留めようと必死になるアイカラスは何を恐れているのだろう。ウィルバーは彼を心の底から信頼しているようだが、ローザベルは曾祖母の警告のせいか、つい穿った見方をしていた。
そしてその疑惑は結婚初夜の床でさらに膨れ上がって――……