白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
マーマデュークによってウィルバーとの婚約を整えられていたにも関わらず、当初彼はアイーダの後継と目されたローザベルを妃にと考えていたらしい。いくら王として即位されたとはいえ彼女を道具のように渡すことはできない、亡きマーマデュークの意に反するものだとアイーダは拒絶。結局その話は流れ、ウィルバーとの婚約が続行するわけだが、ローザベル本人はアイカラスからの打診を耳にすることはなかった。
こうして、一族のために王弟の息子と政略結婚をするのだと、十歳の誕生日に顔をあわせ、病床にいたマーマデュークに告げられたローザベルは、アイーダが天寿を全うした翌年、十八歳の春にウィルバーのもとへと嫁ぐ。
あのときの栗色の髪に空色の瞳はそのまま、けれども身長が伸びて精悍さが加わったウィルバーは好青年へと成長していた。
ローザベルも少女から大人の女性へと変わりつつあった。十歳のときは短かった黒髪も腰まで伸び、胸やお尻も女性特有のまるみを帯びている。
八年前から変わらない神秘的な翡翠色の双眸を見たウィルバーは「こんなきれいな君を花嫁に迎えられるなんて俺は幸せ者だ」と言ってローザベルを喜ばせてくれた。