白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
お互い、十歳のときにすこし話をしただけだったから緊張もしていた。
けれど、王国の重鎮を前に粛々と執り行われた結婚式を終え、侍女たちに身体を磨かれ、用意された部屋へ入った頃にはローザベルは覚悟を決めていた。
その一方、ウィルバーは緊張していた。はじめて顔をあわせた十歳のときのように。
「ノーザンクロスの姫君、ろ、ローザベル……だ、だいじょうぶかい?」
「初夜の作法でしたら、男のひとに任せておけば問題ないと……」
「――ソ、ソウデスヨネ」
「それに、媚薬効果のある香油を塗っていただいたのですでに身体が熱いのです。ウィルバーさま、どうかわたしを抱いてくださいませ」
「……は、花嫁にそのような言葉を言わせてしまうとは、な、なんということ」