白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
海を越えた新大陸で、魔法のように国をつくったマーマデュークにウィルバーは会ったことがない。彼より先に死んだ息子が残した奴隷階級の女の子どもの存在など、知らされてもいないのだろう。
新大陸の知らないところで自分の血縁がつづいていく。それは不思議な気分だった。
けれどもそれは自分と関わることのない、雲の上の話だと、そう思っていた。
スワンレイク王家の使者から、自分が必要だと呼び寄せられるまでは……