白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
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早朝、怪盗アプリコット・ムーンからの予告状を受け取ったウィルバーは、大慌てで車を呼び、ひとり王城へ急ぐ。
邸から花の離宮へ引っ越してきたばかりだというのに、なぜ女怪盗は自分の所在を知ることができたのだろう。
古代魔術を扱う怪盗アプリコット・ムーンは平穏を保っている現スワンレイク王国を騒がす罪人だ。
国王いわく“稀なる石”という特殊な魔力を持つ石を狙っており、集めることで上位の魔法を扱うことができるのだという。怪盗アプリコット・ムーンが撤退する際につかう転移の術も“稀なる石”の魔力を利用したものだと考えられる。だが、転移よりもさらに強力な魔法を行使するとなると、よりたくさんの“稀なる石”が必要になるのだ、と。
憲兵団への報告書には、国家転覆を目論む反逆分子が関与している可能性が挙げられていた。国王が怪盗アプリコット・ムーンを生け捕りにしろと命令したのも頷ける。彼女を殺したら全貌を見ることは永遠に叶わなくなる。捕らえた後も拷問にかけすべてを吐かせるまでは、裁けないのだ。
だからウィルバーは今度こそ捕まえるため、アイカラスのもとへ向かう。