白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
けれど、第一皇太子妃でもともとがローザベルと同じ古代魔術を扱う一族、リヴラの娘であったオリヴィアだけは別格だ。同郷のよしみということもあってか、結婚後もローザベルと王城でお茶をする仲になっていた。
「疲れがでているわよ。結婚生活、順調じゃないの?」
オリヴィアの実家は星詠みではない、薬師としての才能を持っている。彼女自身、政略結婚をマーマデュークに決められ、逃げ出せなかった過去があったそうだ。
ローザベルよりも十歳年上の彼女は、姉のように王族との結婚生活について教えてくれた。ただ、薬師の知識を持っている彼女から愛用の調合道具を見せられ「旦那様の不能を治す薬? それとも媚薬? はやく後継ぎ作りたい?」としきりとたたみかけてくるのはいただけない。
黙りこむローザベルに、「毒薬は惚れ薬を試してからにしたら? それともほんとに具合が悪いの?」と首をかしげるオリヴィア。
ローザベルはついに音をあげ、小声でこぼす。
「あの、お義姉さま……避妊のお薬を、お願いできますか?」