白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 もしかしたら怪盗アプリコット・ムーンはこの場で大魔法を発動させるのではないか、と。

「そんなにすごいのか? 俺にはただの綺麗な石にしか見えないけど……」

 首を傾げるウィルバーに、ローザベルはこくり、と頷く。

「ウィルバーさま。特別に魔法をかけてさしあげますわ。そうすれば、きっとこの“稀なる石”のすごさがわかると思いますから」

 ふふ、と妖艶に微笑む妻はそのまま、ラーウスの古語を唱える。

「過去視のちからを、すこしだけ……」

 さぁぁっ、と目の前に霧がかかる。
 そしてウィルバーは、この場所で過去、何が起こっていたのかをローザベルとともに視ることになったのだ――……
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