白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「占いではありません、過去視です。この地で起こった出来事を覗き視るだけだから。たぶんいまから百年くらい……おばあさま!?」
まさかこのような場所で自分と縁ある人間の姿を認めることになるとは思わなかったローザベル、ぽかんと口を開けている。
その隣でウィルバーもローザベルの曾祖母でスワンレイク王国初代国王マーマデュークに“敬愛”を誓った宮廷魔術師アイーダ・ノーザンクロスの若かりし花嫁姿に困惑している。
それも、体つきが丸見えの、緻密なレース織りの深紅のガウン一枚という扇情的な姿で……
――ローザに、そっくりだ。
年の頃は十五歳くらいだろうか。肩まで伸ばした黒髪に、森林の緑を彷彿させる神秘的な瞳、羚羊を彷彿させるすらりとした手足と、ローザベルよりもおおきそうな胸が目立っている。レース越しに白い肌が透けて見えて、はだかでいるよりも淫らな印象を与える。
どうにか両手をつかって秘部を隠そうとしていたが、少女アイーダのちいさな手では隠しきれていない。