白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
そのため、王だけが知りえる“稀なる石”とノーザンクロス一族の因縁をはじめ、ローザベルが怪盗アプリコット・ムーンであることもはじめから見抜いてしまった恐ろしい子どもだ。
オリヴィアとのお茶会で一緒になった際に小声で「お姉ちゃん、怪盗さんなの?」と囁かれたときには危うくお茶をひっくり返すところだった。ダドリーは誰にも言わないよと言ってくれたが、その日以来、ことあるごとにローザベルを遊び相手に指名してくる。そのためオリヴィアとの茶会が催されると、必ずといっていいほど王城でダドリーと鬼ごっこやかくれんぼをしたりしている。ぜったいに嫉妬されるのでこのことはウィルバーには内緒だ。
今日もオリヴィアのもとに泊まりに来ると知って王城からの迎えの馬車のなかにこっそり忍び込んできたダドリーのことだ、きっとローザベルが怪盗アプリコット・ムーンとしての最後の大仕事に取りかかろうとしていることにも気づいているのだろう。
「そうかもしれませんね……今となってはわかりませんけれど」
「うん」