白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
そのため、ローザベルは怪盗アプリコット・ムーンとしてスワンレイク王国全土に大魔法をかけ、不確定な未来をなかったことにし、一族の不安ともども取り除く覚悟を決めたのだ……そのなかには、夫ウィルバーとの別れももちろん含まれている。
「お姉ちゃん、旦那さんと別れるつもりなの?」
「こら。勝手に透視しないでくださいな。わたしは別れたくないけれど、彼はこの国を守る憲兵団長なのよ。妻であるわたしが怪盗をしていたことが露見したら、さすがに離縁せざるおえないでしょう?」
「うーん。僕はお姉ちゃんの旦那さんを実際に見たことがないからわからないけれど、おじいさまは骨のある男だって評していたからなぁ」
「国王さまが?」
「だけど、お姉ちゃんがそれで構わないならいいんだ。僕もお姉ちゃんと結婚したいから」
「!?」
十歳も年下の男の子からの突然のプロポーズに、ローザベルは目を白黒させる。ウィルバーと別れるなら、自分と結婚できるよね? とずずい、っと迫る少年を前に、ローザベルは困惑を隠せない。