白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
びくり、と身体を震わせるローザベルに、ウィルバーは渋々頷く。いくら王が国民のために美術館に展示させたのだとはいえ、それを易々と盗まれてしまったのは事実だ。希少価値があるという“稀なる石”を中央に飾ったティアラが忌まわしい女怪盗のあたまを飾ってしまった! このことが国民に知れ渡ったら、憲兵団を束ねる長であるウィルバーの評判はどん底まで落ちるだろう。
「まぁね、ローザが心配することはなにもないよ。伯父上に叱られて終わりだろう。ただ、このまま憲兵団にいられるかはわからないかな」
――王族の恥さらしが、またひとつ恥の上塗りをした。
そう思われても仕方がないとウィルバーは自嘲する。
「そうなのですか」
「ただでさえ、俺のようなはみ出しものの扱いに困っているっていうのに、憲兵団にもいられなくなったら、この邸も手放さなくてはいけないな……」
ローザベルの髪を指先でくるくる弄んでいたウィルバーは、そのまま彼女の身体を抱き込み、ソファの上へ押し倒す。
「……だめです、ウィルバーさまっ!」
「鎮めておくれ。愛しいローザ」
仕事で失敗した夫を、その身体で慰めておくれ。