白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 ジェミナイの一族は星詠みのノーザンクロスより格下ゆえに、彼らに闘争心を一方的に燃やしていた。そのため、アイカラスがノーザンクロスの一族にそっぽを向かれた際に我こそがと諸手をあげて宮廷所属の魔術師に滑り込んだ経緯があるのだ。ローザベルよりみっつばかし年上のジェイニーが選ばれたのは、ジェミナイの一族のなかで若いなりにもおおきなちからを扱える実績があったから。

 ――彼女は星詠みができない。だから魔法だよりの宮廷魔術師ではなく、政治に直に関わる宰相という地位を築かせた。
 投影術をつかい、自ら影武者となって。

「今夜は陛下の豪華な部屋のふかふかの寝台でゆっくり眠ることにするよ」
「……ずいぶんとお気楽なものね。わたしが大魔法をつかおうとしていることも知っているくせに」
「“やりなおしの魔法”だっけ? 無謀だね、ローザ。ま、なんにせよジェミナイの人間は手出しできないから止められないんだ。ただ、どのくらい時間を巻き戻すのか、“稀なる石”との相性もあるだろうけど、アイーダさまみたいに事前に陛下に相談してからの方がいいんじゃない?」
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