白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「ありません。妻が言うには魔法を体感しにくい体質なんだとか。ただ、ローザベルと結婚してからはなんとなくそこにいるのかな、って意識できるようになった気がします」
「ほう」

 初代国王マーマデュークは宮廷魔術師アイーダとの間に契約を交わしたからか、この目で精霊たちの姿を見ることができたのだという。アイカラスもジェイニーに魔法を見る“眼”を投影してもらったことで、精霊や古代魔術をしっかり見ることができるそうだ。
 体質上、魔法を受け付けにくいウィルバーは、怪盗アプリコット・ムーンが扱う幻術からいち早く立ち直れるため、憲兵団では強力な戦力とされているが、アイカラスのように魔術の出所を察知するちからはないため、ついつい行き当たりばったりになってしまう。

「陛下はずいぶん妻を気にされていますね」
「そりゃあ、あれだけ美人なら」
「あげませんよ」
「失礼な奴め」

 王と憲兵団長というより、伯父と甥という立場で軽口を叩きあいながら、ふたりは地下神殿内部の石室に入る。既に警備を行っていた団員たちを下がらせ、ウィルバーはアイカラスに視線を向ける。
< 90 / 315 >

この作品をシェア

pagetop