白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
そのため建国をしたスワンレイク王家は真っ先に宗教の自由化に着手。その結果、アルヴス式の教会とラーウス由来の神殿が混在し、独自の文化を発展させていく。
ただ、この花の離宮自体はスワンレイク王国が興る以前に神殿としての役割を終えていたと考えられる。空っぽの妖精王の聖棺が置き去りにされたままなのがその証拠だ。
ウィルバーが昨晩ローザベルに視せられた過去の映像……少女アイーダの淫らな婚儀……あれがこの神殿が神殿として機能した最後の瞬間だったのだろう。
ウィルバーが頷くのを見て、アイカラスはイタズラを思い付いた子どものように命令する。
「そこで、だ。ウィル、棺のなかに隠れて怪盗アプリコット・ムーンを迎え撃て」
「……はい?」
幻術には幻術で対抗する。そのためアイカラスとジェイニーに協力してもらい、作戦を練ったはずなのに、ここにきて棺のなかに自分が入って待ち伏せする?
目を丸くするウィルバーに、アイカラスは不敵に笑うばかり。