白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
空色の瞳に真摯に見つめられ、ローザベルは観念する。
終わりだ。
思わず彼の唇に噛みついていた。
「んぁ!? な、なにを……」
「ウィルバー・スワンレイク。わたしの敗けだ。この身柄を王に捧げよ」
最後のちからを振り絞り、ローザベルは“稀なる石”へまごうことなき彼への“愛”を証明し、“やりなおしの魔法”を発動させる。
「ローザベル・スワンレイクというお前の妻は夢幻だということを悟れ」
刹那。眩いひかりが“稀なる石”から放たれ、ローザベルを抱き締めていたウィルバーと入り口部分で佇んでいたアイカラスへ襲いかかる。
やがてそのひかりは神殿跡地の外を飛び出し、スワンレイク王国を包み込むかのように国中へと拡がっていく。
それでもウィルバーの腕は、怪盗アプリコット・ムーンの身体をはなさなかった。
呆然としているウィルバーよりも先に、アイカラスが声をかける。
「なにをした――アプリコット・ムーン」
目を瞑っていたローザベルは、ゆっくりと翠の瞳を持ち上げて、声がした方向へ笑いかける。