白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「“やりなおしの魔法”をかけただけよ。現スワンレイク王国国王、アイカラス」

 ローザベルは膨大な魔力の爆発にも耐えた男を見て、ようやく彼がこの国の王であることを痛感し、嗤う。

「……これがお前の選択なのか」
「――夫に貴方を殺させはしない」
「ほう」

 睨みあうふたりをよそに、まるで昼寝から目覚めたかのようにのんびり顔をあげたウィルバーは、自分が怪盗アプリコット・ムーンを捕獲していることに気づき、慌ててアイカラスに叫ぶ。

「怪盗アプリコット・ムーンを確保! 王城へ連行」
「……せんでいい。処遇は追って報せる。いまはこの奥にある監獄へ彼女を招待し、逃げ出せぬよう魔法の枷をつけて見張れ」
「はっ!」
「それにしても……ウィル。妻のことだが災難なことになったな」
「……なにがでしょうか?」

 きょとんとするウィルバーを見て、アイカラスは確信する。ローザベルがつかった大魔法はたしかに“やりなおしの魔法”であると。
 けれどもそれは、アイカラスの予想だにしなかったやりなおし方で……
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