白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
時間を過去に戻すことではなく、自分が存在した記憶をなかったことに、やりなおすことにしたローザベルは、赤の他人になったウィルバーから舐めるように見つめられ、興奮して頬が粟立つのをやりすごしている。
「それにしても……この吸い込まれるような翠の瞳……どこかで見たような? まさか、ね」
瞳をのぞきこまれたローザベルは、慌てて自分から目を逸らす。
……これ以上見つめられてしまったら、「愛している」と、声に出してしまいそうだったから。
赤みがかった黄色い半月が、そんなふたりを嘲笑うかのように、見下ろしている。