あなたとしゃぼん玉
コンコン

「失礼します」

滅多に来ない会社の内部の者までいた。

彼を冷たい目で見る。

大矢は冷や汗が止まらない。

「おはよう。…石田さんのニュースは知ってるか?」

「………はい」

「聞きたいことはひとつだけや」

「………」

「彼女の死に大矢君は関わってるんか?」

「………」

「彼女が亡くなったことは非常に残念やけど、彼女はこの会社にはもういないし、過去のことを掘り下げようとは思わへん」

「はい……」

「彼女のSNSの投稿の件はもう知ってると思うけど、マスコミとか、野次馬とか、何かしら騒動がこれからあるんかと思うんやけど………はじめての経験やから、戸惑ってる。彼女の死に関わっていないのなら、マスコミに聞かれてもはっきり無関係と言いたい。本当のところはどうなんや?」

「………」

「騒動が落ち着くまで………しばらくの間でいいから少しおやすみしてほしいんやけど、どうやろか」

「……はい」

口ごもる大矢の態度で察したのか、社長はそれ以上理由を問い詰めなかった。

大矢は社長が気を遣ってくれて、話を引き出さないでくれたんだと思った。

でも実際はこの時点で、そんな事態では無かった。
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