あなたとしゃぼん玉
今でも思う。
口に出して言ってほしかった。
言葉にして、わたしの胸に刻み込んでほしかった。

避妊をしなければどうなるのか。
どんな悲しかったり、辛い思いをすることになるのか。
門限がこんなにも厳しいのはどうしてなのか。
門限を作る理由は何なのか。
夜遅くに出かけるのがダメな理由は何なのか。
どんな危険な目に遭うのか、周りやわたし自身がどんな気持ちになる可能性があるのか。

言葉で教えてほしかった。
声に出して示してほしかった。

もう高校生なんだからそれくらい理解できるでしょうって思ってた?
小さい頃から劣等感と、不平等に対する憎悪の中で生きていたわたしのこころが、どこまで幼く、成長出来ていなかったのか分からなかったんやね。

おかしいでしょ。
この年になって、やっと分かったよ。
この年で経験して、やっと理解できたよ。
高校生の時に知りたかった。
あの頃に知っておけばと今でも思う。
なんであの時、ちゃんと教えてくれなかったの。
あの頃に防げていたことを現在のわたしがしていたら意味ないね。
大切に育てられたとわたしは思えない。
誰かの所為にして生きていないと、もう生きてられないよ。

「実家に帰ってきたらええよ」
母親はそう言ってくれた。
「お金も出す、頼っていい。心配することない」
父親はそう言ってくれた。
しかし、わたしは選ばなかったし、選べなかった。

その1週間後、母親は1人でわたしの一人暮らしする家に訪ねてきた。
この日の出来事はわたしが死ぬ選択をするきっかけになった。
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