あなたとしゃぼん玉
「もう死んでしまおう」
翌朝、フッとわたしはそう決意する。
糸も簡単に決心がついた。
今日も当たり前のように仕事をこなす。
この世で誰も知らなくて、わたしだけが知っていることは「わたしが自殺しようと考えている」ってことだけ。


そう思ったら、時間は恐ろしく早く進んだ。
わたしはわたしがやるべきことだけをする。

300万しか貯まらなかった貯金を全額下ろした。
父が家にいない日を確認し、来月の会社のシフトに三連休を作った。
家にあるわたしが使っていたものを全て断捨離した。
服も靴も小物も書類も大切なものも何もかも。
残ったのはベッドと布団と紙とボールペンだけだった。

クレジットカードを解約した。
月払していたスマホの本体代金を一括で支払った。
通っていた医療脱毛とジムの契約を解約した。
Instagramのアカウントを削除した。
会社のロッカーを掃除する。
会社の制服を1着以外は全てクリーニングに出した。
白い紙に丁寧に父にお願いすることを書き出す。
父と母に宛てた手紙を書いた。


足りないかもしれないけど、300万円はわたしのお葬式代に当ててほしい。
それか、部屋の洗浄代に使って。

90リットルのゴミ袋、新聞紙、使い古したバスタオルを用意した。
長いロープを重いベッドの足に括り付けて、カーテーンレールの間に通す。
何重にも繰り返したし、何十回も途中で壊れないかシュミレーションをした。

45キロの体重じゃびくともしないように頑丈なのかを確認した。
準備はできた。
あとはただ時が過ぎるのを待つだけ。
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