あなたとしゃぼん玉
でも小さい頃の悲しかった記憶が蘇って、お母さんになれる気がしなかった。不倫の末の子どもなんだとこの子が知ったとき、生まれて来なかったら良かったと言われたら生きていけない気がしたの。

そしてわたしの満たされない愛情不足をこの子で補おうとさせるわたしの未来が目に見えていたから。きっと、どんなに冷たくされても、こころを傷つけられても、誰かと比べられても、夢を馬鹿にされても、どんなに相手が悪くても自業自得という母さんを大っ嫌いになれなかった、いつか必ず愛情をくれると信じていた子ども時代のわたしみたいに。愛情の奴隷にしてしまうことが目に見えていたから。

妊娠に気づいてからたった15日で自分の保守で中絶を選んだ。そこからはトラウマで、一切性行為はできなかった。もうヤレないから不倫関係をやめてくれたんやんね。あっさり「分かった」って言ってくれたときは、この1年半、必死に終わろうと言い続けたわたしはなんやったんと思えた。本当はこんなにも呆気なく簡単に終わらせることができることやったんやと思った。関係が切れてから分かったのはぼろぼろになって、使いものにならなくなって、用無しになって、めんどくさいだけになって、初めていらないって手放してくれたね。なんで全部無くしてからじゃないと、離してくれなかったの?
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