あなたとしゃぼん玉
………抜け出す為には命を捨てるしかないと思った。笑うでしょ。本当にもう極論やけど。そこに行き着いた。ここまで落ちたらもう自分の力だけでは抜け出せないし、這い上がれない。誰かに助けてほしかったけど、そんな資格なんて無いんやって気づいた。思い返せばわたし1人がいなくなっても、誰も傷つかないし、誰も気にしないと思う。


最後にひとつだけ。
大矢さんに感謝していることがあるの。
わたしには小さい頃からこころに闇があった。わたしには誰にも入ってきてほしくない領域があるの。ここには誰にも近づけさせたくない。そうやって生きてきた。癒えない傷があるの。それを仕舞い込んで、蓋をして、鍵をして、誰にも気づかれない暗いところに置いておいたの。開けるといつも、“愛がほしい”と泣いてしまうから。

その領域にあなただけが入ってきた。
そのことに気づいてくれてたんかな。その引き出しを赤の他人のあなたが開けようをしてくれた。
あのとき、ずっと隠して何年間も生きていくつもりにしていたこころをたった数時間で開けてくれた。
話を聞いてくれたとき、本当に疲れた。でも、生きている間に誰かにこのこころの闇を聞いてもらえて本当に本当に嬉しかった。それでも好きだと言ってくれたことは、こころの底から嬉しかった。その瞬間、わたしは愛されて良いんだと思えた。どんなに意味不明な感情に飲み込まれても、変わりたいのに進めない、乗り越えられない自分がいても、どこか、ありのままで良いんだと受け入れてもらえた気がした。
あの一瞬でこころが救われた気がした。あのとき、わたしのこころに寄り添ってくれて、ありがとう。ずっとずっとありがとうって言いたかった。
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