あなたとしゃぼん玉
『父さんと母さんと2人のおじいちゃんとおばあちゃんへ

わたしが死んで、父さんと母さんのふたりが涙を流すとは思えない。わたしは父さんには呆れているし、母さんには怯えているから。なんでわたしが小さい頃、父さんは「あーちゃんあーちゃん」と溺愛したのに母さんはわたしに厳しかったの?その同じ愛され方ではないことの相違が気持ち悪くて、父さんが大嫌いになって拒絶した。小6のとき、何かの拍子に父さんの背中に飛びついた。おっぱい出てきたなって言われたときから不信感しか無かった。拒絶したら話してくれなくなった。気持ち悪くなって、拒絶した理由を言わなかったわたしが悪い?これを反抗期で片付ける?愛情の注ぎ方を間違えた2人が悪いのに?

母さんには小さい頃いつも「おかえりは?ただいまは?おはようは?なぜ言えないの?」って言われ続ていた。でも父さんと2人で暮らすようになって、分かったことがある。父さんがおかえりもただいまもおはようも言えないひとだったということ。この人がわたしが小さい頃に言ってなかったから、言わないんで良いんだと学んだの。母さんは父さんがおかえり、ただいまが言えないって知ってた?ごめんなさいもありがとうも言えない人なんだよ?なんで言えないのかは分かんない。恥ずかしいんかな。照れ臭いんかな。プライドが高すぎるんかな。ダサすぎて、反吐が出る。
< 90 / 93 >

この作品をシェア

pagetop