LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
私のその話が終わる頃、ちょうど駅が見えて来た。



「それで、眞山社長に優しい言葉をかけられて、コロッと騙されたんだ」


斗希の言葉に、うっ、と言い返す言葉に詰まる。


まさに、その通りで。



可奈という親友がいたけど、
私の心は愛や優しさに飢えカラカラに渇き切っていて。


眞山社長の私にかける優しい言葉や愛の言葉が心の細部迄染み渡り、
魔法にかけられたようだった。


「私、誕生日を誰かに祝って貰ったのも、眞山社長が初めてだった」


付き合ってと言われた日も、別れた日も私の誕生日で。


そのどちらも、眞山社長は祝ってくれた。


今、騙されたと分かっていても、
眞山社長と付き合っていた一年間は、
本当に、満たされていたのだと思う。


あの、誰かに愛されているという、喜び。


それが嘘だと分かった今も、あの過去の幸福感は消えない。


私には、もう二度と誰かから愛されるなんて事はないのかもしれない。


そう思い、斗希に視線を向けてしまう。


この人が、私を愛する事はないだろうな。


「ねえ、せっかくだし、海でも見て帰ろう」


斗希はその顔をパッと明るくして、
先程みたいに、再び私の手を握った。


それに驚き、斗希を見ると、


「いや?」


と、訊かれるけど。


それは、海を見に行く事に対する質問なのか、
この繋いだ手なのか分からないけど。



「嫌じゃない」


そう、答えていた。







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