LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「お前は、相変わらず好きな女とか居ねぇのか?」


篤にその手の質問をされたのは、数年振りだった。


「うん。居ない」


そう答えながら頭に浮かぶのは、
篤の姉の円さんの顔。


俺は昔から、円さんが好きだった。



「そっか。
斗希、お前すげぇモテんのに、もったいねぇよな?
もし好きな女出来たら教えろよ」


その篤の顔を見ながら、一瞬、言おうか迷った。


俺は、お前の姉の円さんが好きなんだって。


けど、言えない。


「そーいや、円のやつも最近男が出来て」


その篤の言葉に、目の前が真っ暗になるような感覚を覚えた。



「円さん、彼氏居るんだ?」


平静を装い、そう訊いていた。



「ああ。同じ高校のクラスメイトだとか。
どーせ、つまんねぇ奴だろ?
さっさと別れりゃいいんだ」


そう眉間を寄せて話す篤は、不機嫌で。


もしかしたら、俺以上に円さんに彼氏が出来た事に、腹が立っている。



「篤って、シスコンだよね」


そう笑うと、そんなんじゃねぇ、とさらに不機嫌そうな顔をしている。



篤は二人の姉が居るけど、下の姉の鈴さんとは、まるで友達のように仲良くて。


上の姉の円さんは、篤にとって母親代わりの存在だった。


実際の篤の母親がどうしようもない母親だからか、
自然と長女の円さんはしっかりとして、
篤や妹の鈴さんの面倒をとても見ていた。


そして、俺の事も、篤と同じように弟みたいにとても可愛がってくれた。


「ほんと、篤じゃなくて斗希君が弟だったら良かったのになぁ」


そう笑う円さんに、


「うっせーな」


篤はそう言い返していたけど。



実の弟だから、そう言えるのだろうな、と、俺は篤が羨ましかった。


< 124 / 288 >

この作品をシェア

pagetop