LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
なんだか自分の部屋に一人で居るのが辛くて、
家のリビングに行くと母親が居て、今はこいつの顔が見たくないと、
俺は家から出た。


今日は金曜日の夕方で、多分居ないかもしれないけど、と篤の家の方へと行く。


俺は携帯を持っているけど、篤はまだ持っていないので、直接家に訪ねるしかない。



「お、斗希」


俺が篤のアパートの近くへと行くと、
篤がちょうど自宅から出て来た所だった。


「お前、今日塾じゃねぇのか?」


俺が黙っていると、篤の方からそう話し掛けて来た。



「そう。今日はない」


だから、今から遊ばないか、と言い掛けた時。



「俺、今から女の所泊まりに行って来るわ」


そう言う篤の声は浮かれていて、
ヤれるからだろうな。



「明日、休みだもんね」


明日は土曜日で、学校は休み。


きっと、上杉君の家に泊まりに行くと上杉君の親には思わせて、
夜は彼女である姉の部屋へ出入りするのだろう。


それとも、上杉君の親にも、篤とその姉との交際は公認なのだろうか?




「あ、あれ、松村(まつむら)の親父じゃねぇのか?
本当、あの親子そっくりだよな?」


その篤の言葉に、松村の父親と思われる人物の方に目を向けた。


その松村は、俺達の同級生の男子で、
そいつも近所に住んでいて、幼稚園から一緒。


篤は知らないけど、俺は松村があんまり好きじゃないし、
昔から、俺達と特に交流もない。



「俺は、父親に似てないよな?」


気付くと、そう口から出ていた。



「そうだな?
斗希は母親似だよな?
つっても、俺斗希の父親数回しか見た事ねぇけど」


自分から訊いていて、その篤の言葉に深く傷付いていた。


似てないだけで、俺は父親に自分の子供だと思って貰えないのだと、苦しくなる。

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