LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
◇
俺の姿を見付けた篤は、よぉ、とか言って機嫌良さそうにこちらに歩いて来て。
え、と戸惑ってしまう。
その姿は、どう見ても怒っている様子はなくて。
「篤、俺に何の用なの?」
全くの見当も付かなくて、焦ったように訊いてしまう。
「用はねぇんだけど」
なら、なんだ?とさらに焦燥感が募る。
「ほら?今日の夕方、お前なんか落ち込んでたから。
なんか気になってよ」
そう言われ、え、と篤の顔を見てしまうけど。
篤はそうやって見られて、何処か照れ臭そうで。
「気にしてくれてたんだ」
「ああ…」
なるほどね。
彼女である上杉のお姉さんともうヤる事やったから、
俺の事思い出してこっちに来てくれたんだ。
「何が有ったか知らねぇけど、とりあえず、海でも見に行かねぇか?」
「え?海?」
その篤の唐突の提案に、一体何から突っ込めばと、思う。
この辺りに、海なんかないし、それに、今何時だと思っているのかと。
「とりあえず、俺自転車取って来るわ。
お前も、取って来い」
そう言って、俺の意見なんか聞かずに篤は自宅のあるアパートの方へと歩いて行く。
マジか、と思いながらも、俺も従うように自転車を取りに自宅の方へと歩き出した。