LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
篤は俺から視線を逸らすと、海面を見るようにテトラポッドの下を覗き込んでいる。


昔、テトラポッドから落ちるととても危険だと聞いた。


その海流が複雑で、上がって来れないと。


それは、本当なのだろうか?


篤の背に伸ばそうとした手を、寸前で止めた。


俺は一体、何をしようとしてるのだろうか?


自分のしようとした事が恐ろしくて、
気付くと、後退るように足を動かしていた。


篤から、離れるように。


すると、篤は再び、俺に目を向けた。


その目が、俺の罪を見透かされたみたいに怖くて、さらに足を後ろに下げた。


「あぶねぇっ」


そう、篤に腕を掴まれていた。


片足がもう宙を踏んでいて、
篤が腕を掴まなければ、俺は落ちていたかもしれない。


「お前はほんと、危なっかしい弟みたいな奴だからな」


篤に腕を引かれ、俺は体勢を整えた。


「弟って、俺が?
逆じゃない?」


「だって、俺は5月生まれだけど、
斗希は12月生まれだから、お前が弟だろ?」


そういう理屈では、そうかもしれないけど。


「斗希の方が俺よりしっかりしてんだけど。
しっかりしてるだけだからな」


そう笑う篤に、意味分からない、と俺も笑っていた。



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