LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
一つの本に、その手をかけた時。


斗希が、私の背後に立つのが分かった。


その背に、気配を強く感じる程の距離。


「俺、それまだ読んでないから、違うのにして」


その声が、耳元近くに聞こえる。



「いや…これがいい」


その本を引き抜こうとした時。


後ろから、抱き締められた。


私の手が本から離れて、力が抜ける。


「こんな風に、俺の部屋に入って来て。
嫌だって言っても、抱くけど?」


「別に、嫌だなんて言わないけど」


そのつもりで、私はここに来たのかもしれない。


斗希の手が、私の体を自分の方へと向けるように、ひっくり返す。


私の背が、本棚にあたる。


眼鏡を掛けている斗希と、目が合う。


胸の鼓動が段々と強くなり、恥ずかしくなって、
斗希から目を逸らしてしまう。



「俺も恥ずかしいから」


そう言って、眼鏡を外して、それを本棚に置いた。



「見えるの?」


「うん。少しぼやけるけど、近くはわりと見える」


「そう」


私が再び、斗希に視線を戻すと。


斗希の顔が近付いて来て、私は目を閉じた。


斗希の唇と私の唇が重なって、
柔らかさと温もりを感じた。


< 160 / 288 >

この作品をシェア

pagetop