LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「なんつーか、料理上手の優しい母親が居て。
いや、それは世間で普通なのかもしれねぇけど。
うちのババアが変だっただけで」
川邊専務の母親の事も斗希から聞いているから、
川邊専務の言う事が分かる。
「あいつの父親は、なんつーか、俳優みたいだったな。
スラッとしてて、けっこうイケメンで。
んで、いわゆるエリートって奴で。
あの辺りで、一番デカイ家に住んでて。
おしどり夫婦だとか、近所でも評判で」
それを聞きながら、斗希から聞いてイメージしていた通りだと思ってしまう。
端から、そう見えているのだろうと。
「胡散臭ぇな、って思ってた」
それに気付くのは、この人が鋭いからなのか、
斗希と仲良かったこの人は、よくその家に出入りしていたからなのか。
「なんつーか、ドラマとかで、嫁が朝ちょっとそこにゴミ出しに行くだけなのに、
きっちり着替えて化粧迄してたり。
旦那も仕事終わって家に帰って来て、部屋着つってもよそいきのような服でソファーに座って本読んでたり。
なんかありえねぇ、みたいなそういうのが、
あいつの家では普通で。
常に演じてるっつーか。
現実的に、そんな家はあるのかもしれねぇけど、あいつの家のそれは、スゲェ嘘臭いんだよな」
斗希の両親は、端から良い家族に見えるように、
そうやって装っていて。
斗希の前では、夫婦愛し合っているように。
だけど、斗希はずっとそれが嘘な事に気付いていた。