LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「でも、そうだとしても、私はAVなんか」
そもそも、一番の問題はそこ。
斗希さんの話を聞いていて、何故、私にそれをお願いするのかは、理解出来た。
私が姉のふりで18歳以上だと嘘をついてAVに出演し、
その事を後々、問題にして、その社長を困らせよう、という事なのだろう。
その作戦には、現在18歳の姉とそっくりで、16歳の私は、適任だと思う。
だからって、AVなんて。
「俺も、篤にいくらかお金を用意するって言ったんだけど、それはいらないって、突っぱねられて。
って、言っても、俺もまだ学生だし、今までバイトもした事ないから、大して用意出来ないんだけど。
篤、このままじゃあ、何か犯罪に手を染めるかもしれない…。
ヤバい所から、金借りたり」
「え…」
私は、さほど篤さんの事を知っているわけじゃないけど。
斗希さんのその心配が伝染したのか、
それはダメだと、思ってしまう。
「それに、その篤の働いている事務所の社長、けっこうな悪人みたいで。
ヤクザとも繋がっているみたいでさ。
篤はそいつの事慕ってるけど、騙されてる。
いつか、篤もとんでもない目に合うんじゃないかって。
俺、そうなったらどうしていいか…」
追い詰められたように、両手で顔を抑えて俯く斗希さんに、
「―――分かりました」
気付いたら、勝手にそう口にしていた。
そう言った後、やっぱり無理、と言おうとしたけど。
「ありがとう」
そう、抱きしめられていて、言えなかった。
この時は気付かなかったけど、この人は、
顔を覆った手の下で、笑っていただろう。