LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
玄関の方から、扉が開く音がした。
リビングに入って来たのは、斗希と川邊専務の二人。
斗希はスーツだけど、川邊専務は私服で、この人の私服姿を初めて見たからか、一瞬誰か分からなかった。
「斗希さん、篤さん、久しぶり。
私はあなた達の事、前々から見てたんだけどね」
「お前、本当に、寧々か?」
川邊専務のその言葉に、斗希は何も言わないけど、同じ事を思っているのが分かる。
「あ、そっか。顔違うでしょ?
けっこういじったの。
なんでか、分かる?」
斗希や川邊専務には分からないかもしれないけど、
先程迄の寧々さんの話を聞いていた私には、分かる。
「あのDVDは出回らなかったけど、
あのパッケージの画像は、ネットで流れててさ。
顔変えなきゃ、外も怖くて歩けなくて。
誰があの画像見たか分からない。
そこら辺歩いてる人、みんなそれ知ってんじゃないかって、疑心暗鬼になった時期あって。
AVのギャラでしたんだけど。
それでそのお金全部失くなっちゃった」
「けど、お前。
あの時、金が欲しくてって…。
そんなのも分かってて出たんじゃねぇのか?」
川邊専務は、寧々さんから隣に居る斗希に視線を向けた。
「多分、この場に居る人間で、
篤だけが全てを知らない」
「は?どういう事だ?」
「そう。斗希さんの奥さんにも、全部話しておいたから。
思ったよりもリアクションないから、奥さん、斗希さんがクズなの知ってて結婚したんだね。
もしかして、奥さんも斗希さんのように、クズなの?」
寧々さんは、私に包丁を向けたまま近付いて来ると、
素早く私の背後に回り、私の首に包丁の刃を当てる。
「電話でも言ったけど、斗希さんの奥さん、殺すけど?」
耳元で、笑い声が聞こえる。