LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「お父さん、お母さん、こちら、結衣さん」
実家の鍵を持っている斗希は、
チャイムも鳴らさずそのまま私をリビングへと通す。
斗希にそう紹介された時、
斗希のお父さんはリビングのソファーに座り、優雅に何かのティーを飲みながら、
本を読んでいて。
斗希のお母さんはエプロン姿で、キッチンで何かのお菓子を作っていた。
「斗希、来るの早くなるなら言ってよ?
まだマフィンが焼き上がってないのに」
満面の笑みでウフフと笑う、優しい母親。
素敵な父親も一緒に笑っていて。
天気の良い日曜日の昼下がり。
リビングの大きな窓の向こうは、広い庭で。
手入れされた花が咲いていて。
外からの日差しが、リビングを照らしていて。
物もあまりなくて、モデルルームのようなこの家。
本当に、ホームドラマの中にでも入り込んだみたい。
聞いてはいたけど、本当に嘘臭い。
「いや。長居はしないから、お茶もお菓子も必要ないよ」
斗希の言葉に、母親は飲み物を用意しようとしていた手を、止めた。
「斗希?」
私も、え、と思い隣の斗希の顔を見る。
一度、両親に紹介したいと斗希に言われたので、
私は斗希に連れられ今日此処に来たのだけど。
今は午後2時で、確かに一緒にお昼ご飯でもって時間でもないので、そこまで長居はしないとは思っていたけど。
斗希の感じだと、ソファーに座る事もなく、立ち話で済ませようって感じに見て取れる。