LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「今日、此処に来たのは。
結衣が妊娠していて」

斗希がそう伝えた瞬間。


斗希のお母さんは、まあ、と口元を抑えて喜んでいて。


お父さんも、喜んでいるのが分かる。


もしかしたら、私の妊娠の事、今日斗希は自分の両親に告げるつもりかもしれない、とは思っていたけど。


ただ、私の妊娠を告げた時の斗希の表情が、冷たくて。



「結衣のお腹の中に居るのは俺の子供だから。
だから、また父さんに生まれた子供を勝手にDNA検査でもされたら、気分が悪いなって。
それは辞めて、って今日は言いに来た」


斗希のその言葉を聞く両親の表情が、スッと消えて行くのが分かった。


いつかの、斗希が豹変した時の事でも思い出したのかもしれない。


「…な、何を言ってるんだ?
そんな事するわけないだろ?」


斗希の父親は、明らかに動揺していて。


もし、私のお腹の子供の顔が斗希に似てなかったら、
本当に今斗希が言ったように…。


そう思わされてしまう。


「もし生まれて来た俺と結衣の子供に、余計な事したら。
実の父親でも、それなりの法的手段も辞さないから」


その声は、斗希にしては感情的で。


本気で、私とお腹の子供を守ろうとしてくれている。


「それだけ言いたくて。
正月、気が向いたらまた来るから」


そう言って、斗希は私の手を引いて実家から出た。


私はなんだかいたたまれないような気持ちで、
斗希の両親の顔を最後は見れなかった。

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