LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
どうやって川邊専務に席を外して貰おうかと色々と考えていたが、

滝沢斗希の言葉を特に疑わずに川邊専務は私と彼を二人にしてくれた。



川邊専務が店から出て、暫くした頃。


再び、滝沢斗希はコーヒーに口を付けていた。


それに目を向けると、目が合う。


少し苛立ったように、その目を細め、コーヒーカップをテーブルに置いた。


「眞山社長の事があって、味をしめて、またって感じですか?」


その問いかけに一瞬意味を考えたが。


ああ、お金って事か、と思った。


「先程迄の話聞いてませんでした?
私、川邊専務にレイプされたんですよ?」


少し、乱暴な言葉を使う。


「篤は、酒に飲まれるタイプじゃない。
まさかと思うけど、あいつに薬とか飲ませた?」


そう訊かれて、素直に私がそれを認めるとは、この男も思ってはいないだろう。


けど、少し教えてあげる。


「あくまでも、例えばですけど。
例えば、あなたが言うように、私が何かの薬の入ったお酒を川邊専務に飲ませたとしましょう。
例えば、ですけどね。
それで、川邊専務が我を失い、私をレイプしたのだとしたら?」


「もしそうなら、レイプドラッグを使用したとして、男女逆でも小林さんも準強制性交等罪に問われるかもしれませんよ?」


「じゃあ、私を訴えてくれても構いませんよ?
裁判でも、します?」


その私の言葉に、目の前の滝沢斗希は悔しそうに口を結んだ。


もし、裁判なんかになれば、
今回の事が公に知られる。


もし、私が仕組んだ事だとしても、
私と川邊専務の間に性行為があった事実が、公に知られる。


目の前の滝沢斗希は、それによって川邊専務の社会的地位が失われる事が一番に頭に過っただろうけど。


川邊専務本人は、奥さんや子供達家族の事しか、頭に無かった。


今朝の、あの瞬間。


"ーー俺、小林に誠心誠意償うから、
この事は、黙っててくれないか?
嫁も子供も、本当に大切なんだーー"


今朝の、川邊専務のその言葉が、言霊のように今も私を責める。

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