LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「そんな怖い顔しないで下さい。
今私が話したのは、"例えば"の話ですから」


そう言って、私は鞄に入れていたスマホを取り出して、
それを触る。


それを滝沢斗希は、睨み付けるように見ている。


「何も残ってないと、またあなたに、無かった事にされるから」


そう言って、スマホで録音したその音声を再生させる。



『川邊専務、もう辞めて下さい』


その声は私のもので。


夕べ、二度目の性行為の時、
私は隙をついて床に落ちている私の鞄に手を伸ばして、スマホを触り、それを録音した。


その次の瞬間には、川邊専務に後ろから腰を捕まえるように持たれて、
私の体に自身のものを押し込むように挿れられた。


『…辞めて…いや…。
もう辞めて!
いや…』


その振動で、その私の声は震えている。


その台詞は、録音する事を意識して、わざと大きな声を出した。


『…うるせぇ。
逃げんな、殺すぞ。
ヤらせろ…』


その川邊専務の言葉を聞いた瞬間、
最悪だ、というように、滝沢斗希は目を閉じ、両手で顔を覆った。


スマホからは、川邊専務の荒くなった呼吸と、
その打ち付けるような音が聴こえて来る。


『…いきそう。
またこのまま中で出してやるから』


私はもう十分だと、スマホに触れてそれを止めた。


録音した音声はまだまだ続いているのだけど、
これ程決定的な言葉が川邊専務から出たのは、序盤のこの辺りだけ。


その後は、薬の効果が強くなったのか、段々と言葉らしい言葉が川邊専務から失われて行っていた。


夕べ、川邊専務の度々浴びせられるそれらの言葉に怖くて全身が震えたが、
これを聞いた滝沢斗希がどんな顔をするのかと、
それを想像すると、武者震いがした。

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