LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
ポタポタ、と。

私の前髪から滴が落ちる。


私は鞄からハンカチを取り出して、
顔に垂れた滴を拭う。


周りの視線を感じるけど、気にしない。


「―――眞山社長の時は、あれ程余裕だったのに。
親友だと、こんなにも取り乱すんですね?
こんな行為も、もしかしたら法に触れるかもしれませんよ?
私は法律には詳しくないけど。

軽率な行動ですね?」


「刑法208条。暴行罪…。
訴えるなら、お好きにどうぞ」


それは、開き直っているわけではなく、
何処か投げ遣りで。



「お金はいらないです」


その言葉に、え、と滝沢斗希は私を見る。


「私が欲しいのは、お金じゃなくて、滝沢斗希さん、あなた」


「―――は、意味が分からない」


何処か怯えるように、私を見ている。


「私の目的は、川邊専務を陥れる事じゃない。
むしろ、利用しただけ。
滝沢さん、あなたに復讐する為に」


「復讐って…」


「あの話し合いの時から、ずっと忘れられなかった。
あなたの冷たく、私を見下すあの顔。
あなたに言われなくても、眞山社長が私に本気じゃない事くらい、いつの頃か何処かで感じていた。
けど、私はそれを認めたくなかったし、もっと夢を見ていたかった。
なのに…あなたは容赦なく、それを私に認めさせた…」


「―――くだらない。
そんな事で」


そう言って笑うと、あの日見せたような冷たく私を見下すような表情を、滝沢斗希は浮かべた。


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