LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~

「そういえば、川邊専務の所、猫を飼われてますよね?」


「ああ。二匹居る」


以前、雑談でこの人とそんな話をした事があった。


たまたま目の前を歩いていた黒いハチワレの猫が、この人の家の猫にそっくりだったらしく、
その時横に居た私にそう話して来た。


「ならば、私が重度の猫アレルギーだと、奥様に伝えて下さい」


「あ、それはいいな」


すっと、目の前の川邊専務の表情が明るくなる。


「もし…。
ならば、それなら何処か外の店で食事でも、と話が向いたら。
私には、小麦と卵と牛乳、魚介類等、重度のアレルギーがあって、外食は難しいと話して下さい」


「ああ。なるほどな。
けど、それならお前ら夫婦の家でってなったら、どうすんだ?」


「それは…。
川邊専務の方から、流石にそれは相手に迷惑だから辞めておこう、と奥様を諭されては?」


「なるほどな。
けどよ、俺がそんな事を言うって、超怪しくねぇか?」


「―――そうですね」


そう言うと、また川邊専務と目が合うが、反射的に逸らしてしまう。


「にしても、斗希がもしお前に本気になったら。
俺、それもけっこう困んだよな」


その声は、本気でそれを懸念しているようで。


もし、親友である斗希が、私を本気で好きになったとしたら。


その私を、薬のせいだとしても、あんな風に犯して。


その複雑な心情は、分かる。


既に、今の時点でも、
斗希に対して川邊専務はあの夜の事を申し訳ないような気持ちを抱いているのかもしれない。


「斗希が私を好きにとか、あり得ないですよ」


それは、あり得ない。


だって、斗希には好きな女性が居るから。


「あれですね。
斗希と川邊専務の関係って、歪ですよね」


「そうだな。
親友の嫁のお前と関係がある時点で、おかしいよな。
普通、あり得ねぇ」


川邊専務は、そう言うけど。


彼は、知らないだろう。


斗希の好きな、女性の事を。





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