LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「―――お願い。
それだけは、辞めて欲しい」


その、余裕のない斗希の顔。


川邊専務との事での話し合いの時もそうだったけど、
斗希のこの余裕のない顔を見ていると、
私の心がすっと軽くなる。


だけど、斗希はこの円さんが好きなのだと、それで確信してしまう。


ほんの少し、胸がチクりとして、
それに、苛立ちを感じる。


愛がなくても、私は斗希の妻だから、
そんな気持ちが湧くのだろうか?


けっして、この人に好きだとか、そんな感情を抱いてないはず。




「―――もう、この円さんと会わないで。
なら、私は何もしないから」


斗希とその円さんとの仲を、
引き裂いてやるのが端からの目的。


斗希は、もう愛しい女性の円さんに、会えない。


それは、身を切り裂かれるように辛いはず。


「分かった。
もう円さんには、会わない。
俺から連絡しない限り、彼女と会う事はないから」


そう言った斗希の顔は、それを少しも辛そうな素振りを見せなくて。


それに、違和感を覚える。


演技、なのだろうか?



私がこれ以上、円さんに対して深追いしないように、そうやって平然とした態度を見せているのか?



「俺、今日もう疲れてるから。
シャワー浴びて来る」


斗希は立ち上がり、リビングから出て行った。



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