LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「ねぇ、鳴ってない?」
斗希にそう言われ、持っている自分の鞄に目を向ける。
音を消してバイブにしていた、私のスマホが鳴っている。
それを手に取り確認すると、
それは私の母親からの電話で。
何の用だろう?と、怖くなる。
「出たら?」
何処か楽しそうな斗希は、
その電話の相手が誰かは分かっていないだろうけど、
私のただならない様子から、
楽しんでいる。
電話に、出ろと。
斗希に言われなくても、母親からの電話に出ないと後から何を言われるか分からない。
「はい」
私が電話に出ると、
『ちょっと、出るなら早く出なさいよ!』
機嫌の悪そうな、母親の声が聞こえた。
「お母さんから電話なんて、どうしたの?」
この人から電話が掛かって来た事なんて、
今まで数える程しかない。
『あんたに話があるから、今から帰って来られない?』
「今からって…。
話は電話じゃ駄目なの?」
『あんた馬鹿なの?
駄目だから帰って来いって言ってるんでしょ!
今日土曜日だし、あんた休みでしょ』
「え、うん…」
土曜日でも、出勤になる時もあるけど。
『あんたの旦那も連れて来なさい!』
「えっ?」
と、思わず斗希の方を見てしまう。
「なんで…。
私の旦那って…」
『何言ってんの?
あんたの旦那一度もうちに挨拶の一つもせずに、非常識にも程があるでしょ?
とにかく、その人連れてうちに来なさい!』
母親はそう言うと、ブチッ、と電話を切った。