この夏、やり残した10のこと


何となくこのまま早々に帰るのも呆気なくて、誰ともなく虫の音に耳を澄ませる。

この公園はものすごく広い。遊具があるエリアと、森の中のように様々な木や植物が生い茂るエリア、それから見晴らしのいい小さな山があるエリア。
ラジオ体操が終わっても、鬼ごっこやらで辺りを駆け回る子がいた。日差しから守るように枝葉が広がっており、木陰が多い。そのおかげで、私たちも比較的清涼に過ごせている。


「まさか夏休み初日からラジオ体操するとは思わなかった」


ブランコに腰かけた雫は、鎖を握りながらぼやく。


「ご、ごめんね。今まで来たことないから、行ってみたかったの」


私が素直に白状して俯くと、彼女は「まあ、でも」と視線を遠くに投げた。


「朝に体動かすのも悪くないかな」

「雫、あんなに眠そうだったのにね~」


もう一つのブランコに乗って、薫が言いつつ膝を伸ばす。また曲げて、伸ばして、どんどんブランコが揺れていく。
ミントで目が覚めた、と返して、雫は対抗するように漕ぎ出した。


「ミントじゃなくてハッカだろ」

「別にどっちでもいーじゃん。近江、細かい男は嫌われるぞ」

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