この夏、やり残した10のこと


対決だ! なんて言いながらブランコをせっせと漕ぎ出した薫に、近江くんが渋い顔をする。

そういえばさっきから霧島くんの声が聞こえないな、と思ったら、彼は小学生の男の子たちに話しかけられていた。サッカーボールを受け取って、軽やかにリフティングをしてみせる。太腿、足首、柔らかく動きながら最後は高く蹴り上げキャッチ。

そのまま男の子たちに引っ張られて、霧島くんは試合の人員に駆り出されたようだ。
分かった分かった、と彼の口が動く。彼に弟はいるんだろうか。それは知らないけれど、いたらきっと面倒見のいいお兄ちゃんになるに違いない。


「よっし、私の勝ちー!」

「も、無理……酔う」


競争を終えたらしい女子二人が、ブランコを離れて私の隣に肩を並べる。
上機嫌な薫と、若干ブルーな雫。私も乗り物酔いはするタイプだから、ちょっと可哀想だな、と内心密かに同情した。


「あんなに走って暑くないんかねー。わざわざ自分から汗かきにいかなくてもいいのに」


そんな薫の感想はもちろん、目の前のひらけた芝生上でボールを追いかける霧島くんを見てのものだ。
暑そう、と雫が呟く。暑そうだね、と私も追随しておいた。

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