この夏、やり残した10のこと


「悪く言えば諦めてるってことになんのかもしんないけど、死ぬ時って絶対後悔するし未練残るじゃないですか。だったら、まあこれは神様が決めたんだから、って思えば割り切れるというか……」


精神論じゃん、と雫が言う。わりーかよ、と霧島くんはようやく歯を見せて笑った。


「でも、それで簡単に割り切れたら誰も苦労しないし、泣かないと思います。やっぱり悲しいもんは悲しいです」

「うん。……そうだね」


お姉ちゃんの横顔が、とても儚げだった。綺麗な瞳に星が反射して、万華鏡のように輝いている。

いくら意見を交わしても正解の出ない議論は、ひとまず終わったらしい。
今度は誰も言葉を発することなく、静かに夜空を観察するだけだった。

紺色、瑠璃色、群青色。ブルーのグラデーションに、トッピングのごとく散らされた星たち。だけれどその位置は適当なんかじゃなくて、それぞれ所在が決まっている。

一見仲間外れにされているようにも見える月は、堂々と夏の暗闇を照らしていた。綺麗な半月。
七月も、もう終わる。

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