この夏、やり残した10のこと
それもそれで白々しいけれど、どうなのか。
態度を一変させた薫は、無事に唐揚げにありつけたようだった。他のみんなも近江くんから一つずつ分けてもらっている。私は残念なことに揚げ物が苦手なので、気持ちだけ有難く受け取っておくことにした。
とはいえ、本当に意外だ。まさか近江くんがこんなことをするなんて。
何だかんだこれまで色々と付き合ってくれているから、根はいい人なんだろうな、と思ってはいたけれど、基本的に一人でいることの方が好きそうではある。
「え~、俺も何か買ってこよーかな。たこ焼きとか」
霧島くんの独り言に、「ああ、たこ焼きいいよね」と薫が頷く。
「足立も食うならまとめて買ってくるけど」
「じゃあお願いしまぁす」
よっしゃ任せろ、と親指を立て、霧島くんは人波に飛び込んでいった。
その背中を見送り、少し寂しいような、残念なような気持ちになる。思わず追いかけるように数歩踏み出してしまい、我に返った。
視線をずらした薫と目が合う。
見られていたかな、と恥ずかしくなって、でも薫は何も言わず、揶揄ってくることもなく、ただ私を見つめて淡く微笑む。それがまるで「行っておいで」と勇気をくれているみたいだった。
だから私も頷いて、消えた彼の背中を探しに行く。